妄想劇場・流れ雲のブログ

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妄想劇場・森羅万象









歌:永井龍雲
作詞:作曲:永井龍雲


今にも降りそな 空のよう
溜まった涙 あたれ出す
人が見るのも 構わずに
思い切り 泣いた
優しい貴方の 面影を
この唄聞けば 思い出す
傷つくことは 初めから
知っていたけど








青白い顔で「気力が出ない。何もしたくない」と子どもの
中学生時代を「初期思春期」と呼ぶ。


親離れが始まることで、家庭内で培われてきた価値観が、
仲間との関係を通じて自分の新しいものへと
作り変わっていく。


その新しい価値観を「自我理想」と呼び、思春期の発達課題
の一つとなる。


自我理想とは、「自分が将来何をしたいのか」「どんな人間
になりたいのか」など、子どもが描く願いや夢のこと。


「サッカー選手になりたい」「アイドルになりたい」など、
幼児期に初めて将来の夢の原型が生まれます。


やがて、同性の仲間との交流を経て、より現実的で自分
に合った夢へと変わっていきます。


友人と語り合ったり、比較し合ったりすることで、「自分は
何がしたいのか」「自分には何ができるのか」などの考えが
生まれます。


過去から現在、そして未来に向けて「自分がなりたいイメージ」
が「絵空事」から「がんばればできること」になっていくわけです。


より現実的なものへと書き換えられた将来の夢があるからこそ、
「日々の努力をする」「受験勉強に励む」「部活をがんばる」
など、実現に向けた努力が可能になります。


都内に住む中学2年生B君は、中学受験の時、志望校に
受からなかったため、高校受験でのリベンジを誓って、
勉強に励んでいました。


将来は理系の大学に進んで勉強したいとの目標があり、
1年生まではきちんと通学して、部活にも積極的に参加して
いました。


ところが、2年生に進級してから、「部活の友達と合わない。
学校の雰囲気にもなじめない」と、時々学校を休むように
なりました。


2学期になると、とうとう学校には行かなくなり、自分の部屋
からも出てこなくなりました。


部屋に運ばれた食事にも手をつけなくなったため、
心配した母親がクリニックに連れてきました。


初診時には明らかなうつ状態で、「気力が出ない。
何もしたくない」と青白い顔でつぶやくだけでした。


そこで時間をかけて、じっくりと話を聞いたところ、
ぽつりぽつりと自分の心境を話し始めました。


どうやら、B君が引きこもってしまった大きなきっかけは
学校ではなく、家庭内にあるようでした。


大人のモデルであった両親が…


いわゆる「うつ病」と「うつ状態(抑うつ)」は区別して考える
必要がある。


うつ病は「病名」であり、脳内の神経伝達をスムーズにする
抗うつ薬が使われることが多い。


うつ状態は、気分の落ち込みや意欲の低下などのうつ症状
がみられる「状態」を指す。


うつ状態はうつ病以外にもさまざまな原因が認められる。
例えば、ひどくショックな出来事があれば気分が落ち込んだり、
やる気が出なくなるのは正常な反応としてのうつ状態だ。


うつ状態になっている原因に応じて、治療を行う必要がある。
B君には、自宅の近所に住む祖母がいました。


毎日のようにB君の家にやってきては、母親にあれこれ
指図したり、父親の世話を焼いたりしていました。
父親は祖母にとって、自慢の一人息子だったのです。


母親は祖母に遠慮して、抗議ができませんでした。
父親に不満を言っても取り合ってもらえないばかりか、
むしろ祖母の肩をもつことが多かったため、


夫婦げんかが絶えませんでした。そのために母親は
B君がまだ小さい頃から愚痴をこぼし、父親については
「あんな人と結婚しなければよかった」


「あなたのお父さんは本当にひどい人だ」と言い続けてきました。
B君はそんな母親を励ましたり、慰めたりする立場でした。


B君が不登校になる前夜にも、両親の間で激しいけんかが
ありました。驚いたB君がリビングルームに行くと、


母親は「こんな家から出ていってやる。Bも一緒に行こう」
と泣き叫び、父親の前で両親のどちらが悪いのかを無理
やり言わせようとしました。


その場ではB君は何も言わず、以来、自分の部屋に
こもるようになったそうです。


B君は、幼い頃から両親の確執にしょっちゅう晒さらされており、
母親から一方的に父親の悪口を聞かされてきました。


とはいえ、大切な両親です。心の中では父親を大切にしたい
思いもあったわけです。それがB君の心の中で大きな葛藤
となり、精神を不安定な状態にしていました。


身近な大人のモデルであった両親が頻繁にけんかをして
いることで、将来の自分にも明るいものを見いだせなく
なっていたのです。


家族内の問題は、もちろん学校生活にも響きます。
B君の心の中の多くは両親を巡る葛藤が占め、新しい学年
になった後に、なかなか親しい仲間関係を築くことが
できなくなりました。


「志望校の生徒になりたい」という非常に身近な自我理想を
持っていたにもかかわらず、どうして急に無気力状態に
なってしまったのでしょうか。


author:関谷秀子 (精神科医) (つづく)









ひまわりは眠い目を擦り、ゆっくりと上体を起こした。


「まだ眠いよ……」
「文句言わない。ほら、仕事に遅れるぞ?」
「うぅ……分かったよ……」
不満そうにふてくされ、着替えはじめる。


彼女は去年から会社勤めを始めている。と言っても、
朝は弱いし夜更かしも止めない。
ちゃんと教育してきたつもりなんだけどな。


がさつで大雑把……ひまわりは、間違いなく母ちゃんの娘だな。
「――お兄ちゃん!行ってきます!」


「こらひまわり!ちゃんと父ちゃん達に挨拶したのか!?」
「えええ!?時間ないよ!」
「時間がないのはお前のせいだろ!ほら!さっさと挨拶する!」


「……分かったよもう!お兄ちゃんは変なとこだけ
真面目なんだから!」


ひまわりはスーツ姿のまま、仏壇の前に手を合わせる。
「――お父さん!お母さん!遅刻しそうだけど行ってきます!」
そう叫ぶやいなや、ひまわりは忙しく玄関を飛び出していった。


「……ほんと、騒々しい奴だな……」
窓から走っていくひまわりを見送った後、今度はオラが
仏壇の前に座る。


「……父ちゃん、母ちゃん。ひまわりは今日も元気です。
――行ってきます」窓の外から、家の中に暖かい
日射しが射し込んでいた。


「――野原くん、この企画の件だが……」
「はい。これはですね……」会社の中で、オラと係長は、
次の企画について話をしていた。


この会社に勤めてもう9年……仕事にもすっかり慣れた。
高校卒業と同時に入社したこの会社は、会社の規模は
小さいが給料がいい。


おまけに上司も温かみのある人が多く、色々とオラを
助けてくれている。


「――あ、もうこんな時間!帰らないと……」
「ああ野原くん!この後、一杯どうかね!」
「あ……すみません係長、これから家でご飯を作らない
といけないので……」


「少しくらいいいじゃないか」
「はあ……でも、妹がお腹を空かせて帰りますし……」


「……そうか。キミは、妹さんと二人暮らしだったな……
分かった。早く帰ってあげなさい」
「本当にすみません。それでは……」


足早に会社を出て、そのまま家に向かう。その帰りに
スーパーに寄り、食材を購入する。


ひまわりは料理が苦手だ。たまに教えるんだが、母ちゃんに
似たのか、飽きっぽくてすぐに止めてしまう。
ホント、似なくていいところばかり似るもんだ……


「――ただいまー!」
大きな声を出して、ひまわりが帰って来た。そしてスーツ
のまま、台所へ駈け込んで来た。


「お兄ちゃんお腹空いた!今日のごはん何!?」
「クリームシチュー。好きだろ?」
「うん!大好き!」


ひまわりは目を輝かせながら、鍋の中を覗きこむ。
そして大きく匂いを嗅ぎ、満足そうに息を吐いた。


「こらこら。先に手を洗ってきな。ごはんは、その後だ」
「ええ!?いいじゃんべつに……」
「だ~め!」「ぶー……」


渋々、手を洗いに行った。これも何度目の光景だろうか。
行動が全く進歩しない妹に、少しばかり不安を感じる。
これじゃ、嫁の貰い手もないだろうな。


「いっただっきま~す!」
「いただきます」
今のテーブルを二人で囲み、晩御飯を食べ始める。


普段着に着替えたひまわりは、一心不乱にシチュー
を食べていた。「――うん!さすがお兄ちゃん!
すっごくおいしい!」


「ありがと。……それより、会社はどうだ?」
「会社?……う~ん、あんまり面白くないかも……」


「そりゃそうだ。会社ってのは、面白くもないところだ。
面白くないことをするから、お金を貰ってる。基本だぞ?」


「そうなんだけどね……なんていうか、つまんないの。
会社の業績はまあまあなんだけど、先輩に面倒なオバハン
がいてね。やたらと、目の敵にしてくるんだぁ……」


「ああ、いるいる、そういうの。……まさかとは思うけど、
気にしてんのか?」
「私が気にすると思う?」


「いや全然」
ひまわりは神経が図太いからなぁ……これも、母ちゃん
によく似ている。


「ただ、面倒なんだよね、そういうの。
嫉妬するのは分かるんだけど、それなら私以上に
実績積めばいいだけだし。それをしないで、ただ因縁
だけ付けてくるってのが気に入らないんだ」


「……そうか……お前も、大変だな」
「うん。まあね」


あっけらかんと、ひまわりは答える。まったく大変そうには
見えないが……


食事を終わったひまわりは、風呂に入る。
「着替え、ここに置いとくぞ」
「は~い」


風呂の中から、籠った声を出すひまわり。
ひまわりは、とにかく風呂が長い。
何でも、少しでもカロリーを消費するためとか。
無駄な抵抗だと思うんだが……


「……お兄ちゃん?今何か、失礼なこと思わなかった?」
お前はエスパーか……


「……あんまり長風呂するなよ?この前みたいに、
のぼせて倒れちまうぞ?」


「ああ!話を誤魔化した!!やっぱり思ってたんだ!!」
……こういう感が鋭いところも、母ちゃんに似てる……。


脱衣所を出ようとした時に、ふと、ひまわりが言ってきた。
「……ところでお兄ちゃん」
「うん――?どうした?」


「お兄ちゃんさ、今年で27だよね?」
「……まあな」
「――結婚とか、考えてないの?」


「………相手がいれば、いつでもしてやるけどな。
そういうお前はどうなんだよ」
「私?私は、まだ早いよぉ。だって、まだ22歳だし」


「結婚まではしなくても、付き合ってる男もいないのか?」
「う~ん……言い寄って来る人はいるんだけどね……
どれもいまいちというか、パッとしないというか……」
「………」
誰に似たのか、ひまわりは、凄まじくモテるようだ。
まあ確かに、顔は兄のオラから見ても、かなり美人の
分類に入ると思う。何気にスタイルもいい。


男にモテるのも、仕方ないのかもしれない。
もっとも、純情ピュアってわけではなく、何というか、
ザァーッとして、竹を割ったような性格だから、下手に
言い寄られてもまるで相手にはしないようだ。


変な男に捕まらない分、安心はしている。


「……まあ、そろそろお前も結婚考えろよ?
母ちゃんは、お前くらいの時に結婚してるんだからな」


「それはお兄ちゃんも一緒でしょ?さっさと結婚しないと、
一生独身の寂しい人生しか残ってないよ?」
「やかましい。ホラ、早く上がれよ」


オラは、居間に戻った。
風呂に入った後、居間でテレビを見ながら、ぼんやりと
昔のことを思い出していた。・…








私が生まれてすぐ両親は離婚し、
私は、母の実家で祖父母、母と暮らしていました。


母は私を育てるため、毎日毎日遅くまで残業していて、
朝しか顔を合わせない日もたくさんありました。


休みの日は、疲れて遅くまで寝ていて、
どこかへ連れて行ってもらった記憶も殆どありません。


父兄同伴の遠足や運動会も、友達みんながお母さんと
嬉しそうに、手をつないでいるのを見て、やりきれない
気持になりました。


私は手のかからない子供だったと思います。


自分の感情を抑えて、「会社休んで参観日に来て」なんて、
無茶を言ったことなんかもありませんでした。


一人遊びも上手でした。
すべてに遠慮して、幼い頃からおとなに敬語を使う
子供でした。


小学校3年の時でした。


遠足に行った後、作文を書くように言われました。
「五感」をテーマに書くように言われました。


先生は、視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚について
説明してくれました。私はその中で触覚というものを
テーマに選びました。


遠足でこんなことがあったのです。
山道を歩き、学校までの道でのこと。


皆2列になって、手をつないで歩くわけですが、
私は列の一番後ろを歩いていました。


生徒の数が奇数だったため、私は一人で歩いていました。
一人でいるのが上手だから、こんな時の巡りあわせも、
やっぱり一人。


そんなことをぼんやり思いながら、ぽつねんと歩いてました。
その時、ふいに私の肩をたたく人がありました
先生が来て、私の肩をたたき、微笑んでくれました。


そして、私と手をつないで歩いてくれたのです。


いつも先生が手をつなぐのは、もっと手のかかる子ばかりで、
私はいつも心の中で、羨ましいと思ってました。


なんだかすごくドキドキ嬉しくて、歩いてるうちに、
目の前がうっすらぼやけてきました。
前がよく見えないまま学校に着きました。


作文には、遠足の帰り道での、先生の手の温かさについて、
書きました。


私の作文を読みながら、先生が、「手くらい、いつでも
つないであげるのに」と震える声で言って、私の手を
もう一度つないでくれました。


友達たちは、私の作文に何が書いてあったか
気になるみたいで、私に聞いてきました。


でも、私は照れくさくて、走ってトイレに逃げ込みました。
鏡を見たら、涙がこぼれそうになっていました。


ブルっと顔を洗い、パンパンと頬っぺを打って、
にっこり笑顔を作りながら、教室に戻りました。






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