韓信 [シリーズ] 砂漠を行き、草原を駈ける・城下の策謀家


アングラ小説です、不快感がある方は、読むのを中断して
下さいメジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
良いかな・・・


紀元前104年、長安の遊民であった李広利は突如大宛攻略
の命を皇帝から受けた。大宛とは西域の果てにある
未知の国。そこに たどり着くまでには天まで届く山脈、
さまよえる湖、広大な砂漠、果てしない草原……
さまざまな障害が彼の前に立ちふさがる。そこに生きる
人々との出会いは 希望に満ちたものか、それとも幻滅か
・・・
韓信 [シリーズ]
砂漠を行き、草原を駈ける ・城下の策謀家
「さて、李淑よ……。我々は出発するが、異存はなかろうな。
そして改めて聞くが、今後の予定はどうなっているのか」
李淑は一本しかない腕を大事そうに胸の前に置き、自らを抱き
しめるような仕草をしていた。
我々は皆それを不自然に感じていたのだが、どうもこれは
両方の腕がある者が腕組みをする動作に当たるらしい。
彼にとっては自然なものであったのだろう。
「考えてあります。ご安心ください。……我々はここを出て
まずは焉耆国に向かいます。そこにも私が所有する館が
ございますので、次の滞在地はそこということになります」
「ふむ。ここから焉耆国に至るまでは距離にしてどのくらいか」
「早駆けして半日もあれば到着するでしょう。しかし、今の季節
では夜になると行軍が不可能ですので、日の高い時刻に
移動は済ませなければなりません。
夜になると、馬の吐く息が凍り付くほどの寒さです。野営は
不可能です」
「そこに匈奴はいないのだろうな。そしてそれに替わるような
勢力も?」
「匈奴は現在挙国体制を整えており、兵はみな北の戈壁ゴビ
に集結しております。焉耆にはおりません。また、現地の人々
もあなた方が傍若無人な行動を起こさぬ限り、静観している
ことでしょう。ご心配は無用です」
李広利はふうむ、とつぶやき、李淑の瞳の中を窺うような
素振りをした。その言葉に嘘がないか、精神に圧力をかけて
探っているのだ。しかし、李淑は表面上動じなかった。
「イルシとコウカスコに動員がかかったと聞いております。
焉耆国でも同じ状況です。間違いありません」
「……私が心配しているのは」李広利は李淑の発言を遮る
ような、やや強めの口調で語を継いだ。
「匈奴ではなく、君のことだ。君は焉耆にも土地を所有して
いると、君自身の口でそう語った。だが、それも多くの捕虜を
奴隷として差し出した報酬として、匈奴から譲られたものだろう。
私は、いつ君が我々を奴隷として差し出そうとしているのか、
気がかりでならない」李淑はしかし落ち着いた口調でこれに
やり返した。彼の態度は、一貫して揺るがない。
「それにつきましては先日申し上げたとおり、私の言葉を
信じていただくしかありません。仮に私があなた方を匈奴に
引き渡すつもりだとして……西域から匈奴が残らず出払った
今では、その方法もないのです。
したがって、将軍の心配は杞憂である、と私には申し上げる
ことが出来ます」「君は私によって裏切りを疑われていることを
何度も問われても、いつも動じる素振りがない。
君は綿密に言い逃れる方法を考えているのではないか。
いつ何を言われても言い逃れできるように。……
しかし、私はこれで君に警告を与えたつもりだ。
君が我々を裏切るようなことがあったら……そのときは
どうなるかわかっているだろうな」これは明らかに脅迫であった。
しかし、この問いかけにも李淑は動じることがなかった。
「では、焉耆に行くことをやめますか。もしこの私が信用できず、
これ以上の援助は不要だと仰るのでしたら、私は構いません。
今すぐこの館を出て行ってもらいましょう。
あなた方が寒空の下で凍え死ぬか、当てもなく永遠に彷徨う
ことになろうが、私の与り知るところではない」
李広利はそれに対して無言であった。
しかし、李淑を退出させたあとに彼が放ったひと言は、
我々の意思を統一させるものであった。
「あの男は、間違いなくその胸中に企みがある。
善意で我々に協力しようとする者は、絶対にあのような
言葉を吐かないものだ」
「目を離すな。四六時中監視下に置け。それも相手に
気づかれずに、だ」李広利は李淑の行動を見張るよう
軍内に指令を発し、そのうえで焉耆に出発した。
焉耆に至るまでは山越えの必要がある。それほど高い山では
ないが、馬の足を鈍らせるには充分なほどで、この山が
この地の冬の寒さを助長しているようであった。
山を越えた地は乾燥の度を増し、砂を舞わせる。その砂は
氷のように冷たいのだが、水分が含まれていないので
凍らないのである。
「夏は暑くなりますが、冬は極端に寒くなります。そのおかげか、
川の周辺の土地は肥沃で、穀物から果樹まで多くの作物が
ここでは育ちます」
「ということは、住民は農耕民族か。都市の規模はどのくらいだ」
問われた私は、記憶をもとにして答えた。
「確か住民は三万ほどであったと思います。西域諸国の中では
中程度の国であると言えましょう。
湖水があって、山中の国であるにも関わらず、魚が食べられる
と記憶しております」「ほう……慎ましく暮らそうと思えば、幸せに
暮らせそうな土地だな。
それだけを聞くと、ここの住民がうらやましく思える。実際には
匈奴の支配下にあるのだから、そんなことはないのだろうが」
李広利は呟いたが、これは彼が思っている以上に重要なこと
であった。西域の住民は、匈奴が存在しなければ重い賦税に
苦しむことなく、自由に暮らせる。
自分たちが争うことなく、また争いに巻き込まれることなく努力
していれば、他の勢力による安全保障など不要である
はずであった。
そして漢は匈奴に代わり、この地を支配しようとしている。
漢が匈奴より強権的な支配体制をこの地に及ぼそうとすれば、
必然的に彼らは反発するであろう。
漢は、受け入れられる努力をするべきであった。しかし実際は
そのようなことはなく、大宛を攻略するという戦果によって
彼らに畏怖の念を引き起こそうとしていたのである。
つまり、匈奴を上回る軍事力によって……恐怖でこの地を
支配しようとしていたのだ。
「現地の人々は漢も匈奴も存在しなければ幸せだろう、という
考えは常に私の頭の中にある。しかし、それは現実的な考え方
ではない。現に我々は存在しているのだから……。
現地の人々も漢の文化に触れ、優れた生産物を手に入れ、
それをもとに商売が成り立つだろう。それはこの地に住む
人々にとっても良いことであるはずだ。生活が向上する
のだから」
寒い気候が彼の思考を弱気にさせていたのかもしれない。
しかし彼はまだ自分たちの存在意義を信じていた。
何のために戦っているのか、彼は懸命に答えを探していたのだ。

ネズミは体こそ小さいですが、その優れた能力によって
人間の仕掛けた罠をくぐりぬけ、悠々と人様の家の屋根裏に
住み続けたりすることができます。
ネズミの驚くべき能力。
ネズミは犬や猫よりも聴覚が優れているといわれており、
超音波といわれている2万ヘルツ以上の周波数も聞き取れる
そうです。
この優れた聴覚によって、さまざまな種類の音を聞き分け、
危険を予測し回避しているのです。
そのネズミの聴覚を利用したものが超音波ネズミ撃退器と
して売られています。ネズミにとってはうるさいと感じる超音波
を終始発して、家からネズミを追い払うという仕掛けです。
また、ネズミの体毛とヒゲは、周囲の振動や障害物を敏感に
察知することができ、すばやくその場から避難して身を守ります。
ネズミを捕獲するための粘着シートもありますが、ヒゲで
素早く感知して退避されてしまいます。
ネズミは味覚と嗅覚も優れており、毒の入ったエサを仕掛け
ても、味や匂いで察知してそのエサは食べないといった習性
もあります。
また、匂いを感じる嗅覚受容体が、1000種類以上もある
いわれており、少なくとも人間の3倍近くの嗅覚能力が
備わっています。
このように聴覚、触覚、味覚、嗅覚に優れ、警戒心がとても
強いネズミがある寄生虫によって、行動が変化させられて
しまうことが知られています。
その寄生虫とは「トキソプラズマ」という極小の微生物です。
ネズミにも猫にも人間にも感染するトキソプラズマとは、
単細胞生物で、人間やネズミを含むほぼ全ての哺乳類・鳥類
に寄生してトキソプラズマ症を引き起こします。
この寄生虫は人から人に感染することはありません。
口から入ったトキソプラズマは、消化管壁から細胞内に侵入
すると2分裂を行いながら活発に増殖します。
体内に侵入された人の体もトキソプラズマを排除するため、
免疫応答を開始します。
すると、トキソプラズマは中枢神経系や筋肉内で組織シスト
と呼ばれる形態になります。組織シストは安定した壁に
覆われているため、トキソプラズマは免疫系の攻撃を
受けずに生存を続けることができるのです。
しかし、トキソプラズマに感染したとしても健康な人であれば
症状は出ないか、出たとしても、かぜのような軽い症状だと
言われています。
唯一問題となるのは、妊娠中に初めて感染した場合で、
トキソプラズマが胎盤を通過し胎児に移行して、胎児が
感染すると、脳や目に障害が出ることがあります。
世界では3分の1もの人がこの寄生虫に感染しており、
日本では約10パーセントの人が感染していると言われて
います。
ほぼ全ての哺乳類・鳥類が感染するトキソプラズマですが、
それらは中間宿主であり、最終的に到達して生殖をおこなう
ことができる終宿主は1種です。
その生物とは「猫」です。つまり、猫への移動手段として
人やネズミなどの哺乳類を媒介に用いているのです。
ネズミの行動を操作して猫に食べられやすくする?
トキソプラズマは人間やネズミなどの中間宿主の体内で
生育が終わって生殖をおこなえる段階になると、終宿主で
ある猫に移動して、有性生殖をおこないます。
つまり、成長段階に合わせて、寄生する宿主を変えなければ
成長したり、繁殖したりできません。
そのため、トキソプラズマは成長期に体内でお世話になった
中間宿主であるネズミから猫の体内に移動するため、
感染したネズミが猫に食べられやすくなるように行動を
変化させているのです。
これまでの研究では、トキソプラズマに感染したネズミは、
猫に食べられやすいように反応時間が遅くなり、猫の尿の
匂いに誘われるようにして徘徊し、無気力になり危険を
恐れなくなることが知られています。
最近まで、なぜネズミの行動がこのように変化するのかは
謎とされてきましたが、2009年にイギリスの研究チームが
この謎を解く手がかりを発表しました。
トキソプラズマのDNAを解析した結果、脳内物質のドーパミン
の合成に関与する酵素の遺伝子があることを突き止め
たのです。ドーパミンとは快楽ホルモンと呼ばれるほど快楽、
探索心、冒険心に強く影響する脳内物質です。
つまり、この原虫に寄生されたネズミはドーパミンを分泌
するため、恐怖がなくなり、自信と冒険心をもって行動し、
猫を恐れず大胆不敵に行動するようになったと考えられて
います。
脳に侵入するトキソプラズマ
どのようにしてネズミの行動を操作しているかについては、
宿主の免疫細胞に乗って、宿主の脳内に移動していると
いうことがわかりました。
トキソプラズマは経口摂取によって感染が起こります。
宿主側もただ侵入を許すわけではなく、通常、口から侵入
した寄生虫や病原菌は宿主の免疫機構によってすぐに
排除され、感染が全身に広がらないようにします。
しかし、トキソプラズマは、宿主の口から侵入し、全身に
広がり、脳を乗っ取るのです。
実は脳にまで達する寄生虫や病原菌というのはとても
稀です。脳は動物にとって中枢であり、大変大切な部分
であるため、脳を守るために血液脳関門という脳のバリアー
があるからです。
脳以外の毛細血管では、細胞同士の間に大きな隙間があり、
大きな分子も通過できますが、脳の毛細血管は内側の細胞
がギッシリ並んで隙間がなく、アミノ酸・糖・カフェイン・ニコチン
・アルコールなど一部の物質しか通さない機構が備わって
います。
そうして、大きな分子、病原菌、寄生虫などの有害物質から
脳を守っているのです。
しかし、トキソプラズマは脳に侵入することが可能です。
その方法の全貌はまだ明らかになってはいませんが、
その一部が2012年、スウェーデンのチームによって
示されました。
この研究チームがトキソプラズマに感染している実験用
マウスを調べたところ、寄生虫などを攻撃して殺すはずの
免疫細胞内にトキソプラズマが生息していることを発見
しました。
この免疫細胞は白血球の一種で、樹木に似た形状から
“樹状細胞”と呼ばれています。樹状細胞は通常は免疫系
の門番としての役目を果たしています。
しかし、トキソプラズマは、本来寄生虫を排除する機能を持つ
免疫細胞を使って宿主の体内を移動し、ついには宿主の
脳にまで到達していました。
しかし、どのようにして免疫細胞を乗り物にしていたのでしょうか。
免疫細胞は刺激を受けない限り動きません。トキソプラズマが
操縦できるわけでもなく、樹状細胞は感染していることにさえ
気づいておらず静かにしています。
では、何が樹状細胞を動かしていたのでしょうか。
研究チームが詳しく調べた結果、GABA(ガンマアミノ酪酸)
という脳内物質が関係している証拠が得られました。
GABAはブレーキの役割を果たす抑制性の神経伝達物質
として、多くの脳機能に関わっている物質です。
トキソプラズマに感染した宿主の樹状細胞からこの脳内
物質であるGABAが見つかりました。
つまり、樹状細胞がトキソプラズマに感染すると、樹状細胞が
GABAを分泌し、それが同じ樹状細胞の外側にあるGABA
受容体を刺激し、トキソプラズマに感染した細胞の移動能力が
活性化されることが、培養細胞を使った実験で明らかに
なりました。
これらの結果から、トキソプラズマは感染した樹状細胞に
GABAを強制的に作らせ、GABAによって全身への移動が
可能になり、脳に達し、脳を操るという可能性が示唆されました。
GABAは抑制性の神経伝達物質であるため、GABAの量が
増えると、リラックスし、恐怖感や不安感が低下する。
トキソプラズマに感染すると宿主の恐怖感が減少するのは、
感染した免疫細胞が脳内へ移動しGABAの濃度が高まる
ためであると考えられています。
このように、目に見えないほど小さな微生物である
トキソプラズマは宿主の行動変化をおこさせ、自分の
都合の良いように操るという非常に高度な技をもっています。
実はこの行動操作はネズミだけではなく、人間にさえ
起きているようなのです。 ・・・
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