妄想劇場・流れ雲のブログ

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韓信 [シリーズ] 砂漠を行き、草原を駈ける・大軍の迷い







歌:新沼謙治
作詞:阿久悠:作曲:川口真


初心と純との初恋は
とうに破れて 夢の中
白い林檎の花びらを
風が散らした あの日から








韓信 [シリーズ]
砂漠を行き、草原を駈ける・大軍の迷い



このときの亀茲国は輪台を支配し、比較的強勢を誇っていた。
しかしその輪台が武力によって降されたことを知ると、
無謀な賭けをせずに我々を受け入れてくれた。


軍には食糧が補給され、安全な道の情報が提供される。
彼らは河川を横断するための船の手配までしてくれた。


「この先、川を渡る必要があるのか」


李広利は周囲に問いかけたが、誰もそれに対して返答は
出来ない。李哆もこれについては明言を避けた。


「私が知る行程には、川を渡るものは含まれておりませんが
……現地の者が言うのですから、いわゆる近道などが
あるのかもしれません」


季節は夏であり、行軍中も暑さに苛まれる。水も干上がる
ほどの土地に川が存在すること自体が、信じられること
ではなかった。


しかし夏の盛りでも西域の都市には水が湧き、生活が可能
なことは事実なのである。このあたりにその謎を解く鍵が
隠されているのかもしれなかった。


しばらく行軍を続けると、突如としてその謎が解けた。


しかしそれは新たな謎を呼び起こし、結果的に我々は
自然の不可解さを思い知らされるばかりであった。


「水の匂いがする」


乾燥した風が吹きすさぶ中に、ごく僅かな湿り気を感じると、
人はそれを「匂い」と解する。その感覚は客観的な説明が
不可能なものであり、


たとえ理由を問われても


「だって、匂いが本当にするのだから」と、しか答えようがない。
その感覚が正しいかどうかは、同調する人物が多数いるか
どうか、それだけにかかっている。


このとき李広利は、残念ながらその「匂い」を体感すること
が出来なかったという。


部下たちが口々に水の存在を主張する中で、彼はもどかしさ
を感じながら、視力を頼りにするしかなかった。


「地平線がやや歪んで見えるようだが……


なんというか、大地が熱せられて湯気を発しているような…
その湯気によって、向こうの砂山が浮かび上がって見える」


李広利の声に一同は視線を地平線に送ったが、
誰もそれを口で表現することはなかった。


「私の目も、いよいよおかしくなったのかな?」


自虐的な表現をした李広利であった。だが実のところ、
それは全員の意識であった。


その光景を見た者は、皆等しく自分の目がおかしくなった
のかと疑ったのである。


「確かに……山が空中に浮かんでいるように見えます。
おかしな現象だ」


私もこの状況に驚かざるを得なかった。


しかも空中に浮かぶ砂山は、まるで絵に描いたように
輪郭がぼやけていて、実在しているように見えない。


「奇術を得意とする敵が作り出す技ではなかろうな」
半ば本気で尋ねた李広利であった。


「蛇使いや火吹きなどを得意とする者はおりますが、
それらは大道芸に過ぎません。我々を攻撃できる
ほど強力なものではないはずです」


李哆はそのように説明したが、彼は長い期間をかけて探索
をしたにも関わらず、付近を流れているとされる川の存在
も知らなかった。


そのため、この発言にはあまり説得力がない。


丘就卻はこのとき後方にいた。通訳の仕事は思いのほか
忙しく、休めるときが少ない。よって、彼は他者との接触が
ない行軍の間に限って、休息を許されていた。


馬車の台上で眠っていたのである。
その丘就卻が起き上がって事態を確認したところ、
謎が解けた。


「あれは、砂漠にしばしば起きる現象ですよ。
恐れる必要はありません」


「ほう……どういう現象か説明できるか」


「口で説明することは難しいのですが……
地面の熱さと空気の温度の差が大きいときによく
見られる現象です。


通常であれば砂漠は日の光によって熱せられ、
空気よりも熱いのですが、何らかの原因によって
その状態にないとき……


湯気が沸いたように風景が歪んで見えるのです。


ここで大事なことは……大抵その場所には何かがある。
通常の砂漠ではない何かがあるということを意味して
いるのです」


「つまり、あそこに川が」存在しているというのである。
しかし、李哆はそれを否定した。


「私が以前この地を訪れたときには、そのようなものは
存在しなかったぞ」


それに対し丘就卻は両手を広げ、抵抗する意思を
示さなかった。


「単なる推測です。行ってみればわかることですよ。
私が言いたいことは、あの現象自体に危険はない、
ということだけです」


そこで軍は前進し、幻覚の源へと向かった。


歪んでいた地平線が突如として正常な形に戻ったか
と思うと、そこには目を疑う光景が広がっていたのである。


「大河だ……対岸が見えないほどの」


「こんなことが……あるはずがない。
これほどの大河を見落とすなどあり得ない」
李哆は目の前の現実が信じられない様子であった。


彼が以前この土地を訪れたときは、見渡す限りの
砂漠でしかなかったのである。
「急に川が流れることなど、あるのでしょうか」


李哆は聞いたが、李広利にわかるはずもない問題である。
「私に聞かれてもな……丘就卻はわかるか」


問われた丘就卻は記憶を掘り出すようにして、これに答えた。
「私は西域といっても東部の出身ですので、この川をこれまで
に見たことはありません。


が、話を聞いたことがあるような気がします。


確か……遙か南の崑崙山脈の氷雪が、夏になると溶け
出して大河をなす、と……しかしこれほどの規模とは
思いもよりませんでした」


「川の名は?」
「存じませぬ」
我々は、それが幻覚ではなく紛れもない川であること
を確認すると、実際に川に向かった。


亀茲国が用意してくれた船の存在を確認しようと、
岸まで近づいたのである。


「下流の方に船団らしきものが見えます。あそこに
向かいましょう」


しかし六万ほどの軍団を一度に渡すほどの船が存在
するのだろうか。最悪でも二回の往復ほどですませ
たいものだ。


李広利は突如現れた川に向けて、毒気を吐いた。
「砂漠にどんな恵みを与えようが、我々にとっては
邪魔でしかない川だな。


夏になると現れる川か……
もう少し待って冬に訪れるべきだった」


しかし李広利は砂漠の冬を実際に体験したことがない。
李哆はこの点に注意を促すのであった。


「今は夏ですので酷暑ではありますが、冬になると砂漠は
信じられないほどに冷え込みます。防寒の備えが必要です」


「では、やはり天山の北に道をとり、
烏孫を通過する方が良かったか……」












死を待つセミは何を見る・・・


セミの死体が、道路に落ちている。
セミは必ず上を向いて死ぬ。


昆虫は硬直すると脚が縮まり関節が曲がる。
そのため、地面に体を支えていることができなくなり、
ひっくり返ってしまうのだ。


死んだかと思ってつついてみると、いきなり翅(はね)を
ばたつかせてみたりする。


最後の力を振り絞ってか「ジジジ……」と体を震わせて
短く鳴くものもいる。


別に死んだふりをしているわけではない。彼らは、もはや
起き上がる力さえ残っていない。


死期が近いのである。


仰向けになりながら、死を待つセミ。
彼らはいったい、何を思うのだろうか。


彼らの目に映るものは何だろう。
澄み切った空だろうか。夏の終わりの入道雲だろうか。
それとも、木々から漏れる太陽の光だろうか。


ただ、仰向けとは言っても、セミの目は体の背中側
についているから、空を見ているわけではない。


昆虫の目は小さな目が集まってできた複眼で広い範囲を
見渡すことができるが、仰向けになれば彼らの視野の
多くは地面のほうを向くことになる。


もっとも、彼らにとっては、その地面こそが幼少期を
過ごした懐かしい場所でもある。


「セミの命は短い」とよくいわれる。


セミは身近な昆虫であるが、その生態は明らかに
されていない。


セミは、成虫になってからは1週間程度の命といわれて
いるが、最近の研究では数週間から1カ月程度
生きるのではないかともいう。


とはいえ、ひと夏だけの短い命である。


しかし、短い命といわれるのは成虫になった後の話である。
セミは成虫になるまでの期間は土の中で何年も過ごす。


昆虫は一般的に短命である。
昆虫の仲間の多くは寿命が短く、
1年間に何度も発生して短い世代を繰り返す。


寿命が長いものでも、卵から孵化(ふか)して
幼虫になってから、成虫となり寿命を終えるまで
1年に満たないものが、ほとんどである。


その昆虫の中では、セミは何年も生きる。
実に長生きな生き物なのである。


幼虫の期間が長い理由


一般に、セミの幼虫は土の中で7年過ごすといわれている。
そうだとすれば、幼稚園児がセミを捕まえたとしたら、
セミのほうが子どもよりも年上ということになる。


ただし、セミが何年間土の中で過ごすのかは、
実際のところはよくわかっていない。


何しろ土の中の実際の様子を観察することは容易では
ないし、仮に7年間を過ごすとすれば、生まれた子どもが
小学生になるくらいの年数観察し続けなければならない。


そのため、簡単に研究はできないのだ。
土の中での生態については、いまだ謎が多いのである。


それにしても、多くの昆虫が短命であるのに、どうして
セミは何年間も成虫になることなく、土の中で
過ごすのだろう。


セミの幼虫の期間が長いのには、理由がある。


植物の中には、根で吸い上げた水を植物体全体に
運ぶ導管(どうかん)と、葉で作られた栄養分を植物体
全体に運ぶ篩管(しかん)とがある。


セミの幼虫は、このうちの導管から汁を吸っている。
導管の中は根で吸った水に含まれるわずかな栄養分
しかないので、成長するのに時間がかかるのである。


一方、活動量が大きく、子孫を残さなければならない
成虫は、効率よく栄養を補給するために篩管液を
吸っている。ただ、篩管液も多くは水分なので、


栄養分を十分に摂取するには大量に吸わなければ
ならない。そして、余分な水分をおしっことして
体外に排出するのである。


セミ捕り網を近づけると、セミは慌てて飛び立とうと
翅の筋肉を動かし、体内のおしっこが押し出される。


これが、セミ捕りのときによく顔にかけられた
セミのおしっこの正体である。


夏を謳歌するかのように見えるセミだが、地上で見られる
成虫の姿は、長い幼虫期を過ごすセミにとっては、
次の世代を残すためだけの存在でもある。


繁殖行動を終えた成虫に待つのは…


オスのセミは大きな声で鳴いて、メスを呼び寄せる。
そして、オスとメスとはパートナーとなり、交尾を終えた
メスは産卵するのである。


これが、セミの成虫に与えられた役目のすべてである。


繁殖行動を終えたセミに、もはや生きる目的はない。
セミの体は繁殖行動を終えると、死を迎えるように
プログラムされているのである。


木につかまる力を失ったセミは地面に落ちる。


飛ぶ力を失ったセミにできることは、ただ地面にひっくり
返っていることだけだ。わずかに残っていた力もやがて
失われ、つついても動かなくなる。


そして、その生命は静かに終わりを告げる。


死ぬ間際に、セミの複眼はいったい、どんな風景を
見るのだろうか。


あれほどうるさかったセミの大合唱も次第に小さくなり、
いつしかセミの声もほとんど聞こえなくなってしまった。


気がつけば、周りにはセミたちのむくろが仰向けに
なっている。夏ももう終わりだ。…


季節は秋に向かおうとしている。・・・









昨日4時22分に母が亡くなった
風邪一つひかない元気な母だった。


僕が幼稚園に入るころもう父はいなかった。
借金作って逃げたらしい。


朝は4時に起きて僕らの弁当作って、
6時から17時まで弁当屋でパート。


帰ってきたら晩飯作ってすぐに出て行って、
11時までパチンコ屋で掃除のバイト。
休むのは月に3回あればいいほう。


そうやって僕と妹は育てられた。


反抗期なんてほぼ無かった。
あんなに頑張る母親を見て反抗なんてできる
はずなかった。


いや・・・一度だけあった。


クリスマスの2、3日前ゲームボーイが欲しい
とねだった。


友達がみんなゲームを持っていたのに
自分だけ持ってないと苛められると。


何故あんな嘘をついたのだろう・・・。


母は「ごめんね・・・」と顔をくしゃくしゃにして泣いた。
僕も何故か悲しくなって家族3人でボロボロ泣いた。
その日は3人とも同じ布団で抱き合って寝た。


クリスマスの日の夕食はおでんとケーキだった。


母親は子供のようにはしゃぎ、歌い、
最後に「はい」とプレゼントを渡した。


古いゲームソフトだけを買ってきた。


「これだけじゃできないんだよ」と言おうとしたけど、
うれしそうな母の顔を見て言えなかった。


あれから20年、兄妹そろって大学まで出してくれた。


俺も妹ももう就職したし、これからは楽させてあげる
から仕事やめなよ、って言ったのに。


働いてなきゃボケるって・・・そんな年じゃないだろう。


どっか3人で旅行に行こうよって言ってたのに。
妹の結婚式見るまでは死ねないって言ってたのに。


なんで末期癌になるまで働くんだよ・・・。
何度も病院行こうって言ったじゃないか。


先生も言ってた
「あんなに我慢強い人見たこと無い」って。


看護師さんに「迷惑かけてごめんね」ばっかり言って
たんだってな。


いっつも人のことばっかり気にして・・・。





耕ちゃんへ


「小さいころはいつもお手伝いありがとう。
あなたはわがままをひとつも言わないやさしい子でした。
妹の面倒も沢山見てくれてありがとう。
あなたが生まれてきてくれてほんとうにうれしかったよ。
あなたのお嫁さんを見たかった」


梓へ


「女の子なのにおしゃれをさせてあげられなくてごめんね。
いつも帰ったら『ぎゅっとして』と言ってくるあなたに、
何度私は救われたかわかりません。
あなたはあなたを愛する人を見つけなさい。
そしてその人のために生きなさい」


ふたりへ


「死は誰にでも訪れるものです。悲しまないで。
あなた達がもし辛いことがあったら
いつでも枕元に立ちますよ…なんてね。


あなた達の母親で良かった。
また生まれ変わってもあなた達の母親でありたい。
それが私の唯一つの願いです。


体に気をつけて。
寒いからあたたかかくして。
それから・・・それから・・・きりが無いからやめとくね


たくさんたくさんありがとう」


お母さん・・・手紙涙でにじんでボロボロだったよ。
だから紙を買ってきてくれっていってたんだね。


お母さん・・・ありがとう、ありがとう。


まだ遊んでるよ。
プレゼントしてくれたスーパーマリオランド。


・…





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