妄想劇場・流れ雲のブログ

趣味の、自己満ブログです。人生は、振り返ることは出来ても、後戻りは出来ない…掲載内容に問題がある場合は、お手数ですが ご連絡下さい。 迅速に対応させていただきます。

妄想劇場・森羅万象









歌:西崎緑
作詞:田久保真見:作曲:永井龍雲


あなたに逢うため
あのひとに嘘をつく
愛しか見えない
女は嘘つきなの









「ガラ悪いんですけど……」街金で就職&返済の日々


王様の言う、「あんちゃん」は、誰もが知る会社の
大会長でした。


働くといっても、大会長の会社で雇ってもらえるわけではなく、
大会長の資産を金貸しで運用する人たちと一緒に働け、
という意味でした。


結局、金貸し。でも、法定金利。


おばあちゃんの口座を使わなくてもいい。しかも、勤務地
は東京。即決でした。


3ヶ月ぶりに東京に帰れる。


3ヶ月家賃払ってない我が家に。
おじさんの許可をもらい東京に帰りました。


おじさんは、「頑張れよ」と励ましてくれたのと同時に、
「これ集金してこい」と、関東方面の債務者リストを
渡してきました。まだコキ使うんです。


この時点で、おじさんから借りた100万円は月1割の利息
にオマケしてもらっていました。


福岡で鍛えた土下座テクで大家さんにもお許しをいただき、
ぼくの街金生活、いよいよスタートです。


新しい勤務先はスーツ着用です。


福岡の闇金事務所は、だぼだぼジーンズにネックレス
じゃらじゃらしたクソラッパーとか、上下ジャージの双子
とか最悪の環境でした。


王様に、スーツ持ってないんですと嘘ついたら、スーツ
カンパニーで2着買えるくらいの現金が支給されました。


このころには、グループ全体の頭脳扱いされてたので、
ちょろいもんです。


王様の汚い字で書かれた住所のメモ通り、上野の雑居
ビルを訪ねました。


福岡から頭脳が来る〟VIP待遇を妄想してました。


「ささっ、せんせい、こちらの席です。わたしたちのエクセル
もお願いできますか」・・・


甘かったです。東京には上がいました。いま思えば
当然です。


すっぴんで常にむくんでる女子事務員、毎日超絶機嫌
悪いんですけど、エクセル達人でした。


債務者リストもおしゃれに色付けされてて、見やすいの。


聞けば、某大手OL→飲み会のあとサパーのキャッチに
引っかかる→どハマり→ホストも楽しい→週4でキャバクラ
でバイト→昼間眠い→本格的に夜の蝶→ほんとは昼間
働きたいの→メンタルやられる→常連の金貸しが
水揚げという、・・・


典型的な堕落事務員でした。


最悪です。福岡より最悪です
普通の会社を想像していました。
仕事帰りにみんなで飲みに行って、上司の愚痴で盛り
上がって、かわいい女子社員もいたりして、社内恋愛とか
あって、ノルマ未達のやつ励ましたりとかして。


みんなすごいガラ悪いんですけど……


福岡と全然変わらないんですけど。仕事終わりの飲み会
はありました。ほぼ毎晩ありました。


飲みに行ったら高確率でケンカするやつしかいません
でした。従業員同士、ほかの客、店員、通りすがりの人。


尾崎豊の世界、誰かのケンカの話にみんな熱くなり。
毎晩恒例です。


新人が買った高級靴を、マサカリ投法で不忍池に投げ込む
やつらでした。


最悪です。福岡より最悪です。


そんな最低な街金生活と並行して、おじさんの債権回収
もしなければいけません。


某社を訪問すると、先客がいました。よくあることです。
ガン詰めされてる社長と、ザ・闇金の3人組。


数人いた事務員さんは視界を前方10センチくらいにできる
能力があるようです。ぼくに気づいてくれません。


超絶高利貸しの人って、すぐテーブルの上に足をあげて
背もたれギーコギーコするんですけど、靴が汚いとか、
合皮じゃね? とか、突っ込まれ要素を自ら提供する
アレ、何なんでしょうか。


「あのーうちも集金なんですけど」


「あぁ ワシらがいるの見えてんのに言ってんの? 
見えてないの? なぁ?」


「ぼくに絡んでもしょうがないんすけどね……待ってます」
社長が助けてって視線を送信し続けてきます。


いや、ぼくも集金に来てるんですけど。


競合他社の猛攻で回収が難航していると、おじさんが
債務者に直接電話します。


「おい社長! ワシの後回しにしてんのなんで?
ワシ出張さすの?」


「え、こないだ払いましたけど」
おい社長、ほかの取立てとごっちゃになってるやんけ。


おじさん、ぼくが使い込んだとちょうキレます。
「いや、もらってないですよ。よそと勘違いしてるんじゃ
ないですかね。


クソ債務者とぼく、どっち信用するんですか」
「おまえもクソ債務者やけん、どっちもどっちやろが。


はい、おっしゃる通りです。まだ債務者です。
元金の3倍くらい払ってるクソ債務者です。


3ヶ月、コツコツ築き上げた信用も、一瞬で崩れます。
しかも第三者の適当な発言で。


でもおじさん、翌日には、
「東京でしか手に入らん靴あるんや、こないだ藤原ヒロシが
履いてたやつや。


3足くらい買って送ってくれんか?」と電話してきます。
東京限定を同サイズ3足仕入れろとか、無茶しか言いません。


あのころのぼくは、おじさん奴隷のストレスをぜんぶ
債務者の人たちにぶつけていました。


ぼくとあなたが落ちた借金の穴。


底なし沼に落ちた。助けて。誰も助けてくれない。
どうして、どうして。


這い上がろうともがけばもがくほど深みにはまる底なし沼。
でも実は、あなたの落ちた穴、上からみたら底が見える
小さな穴。


大丈夫、無理しない。借金なんかに身体張らない。
ほら、ぼくいま、街金。生きてます。(次回につづく) 










「……ねえ、まさおくん。オラは、キミの友達だからさ、
だからこそ、敢えて言わせてもらうね」


「……え?な、何を……」
「――いい加減にしなよ、まさおくん」
「――ッ!?」
オラの言葉に、まさおくんは言葉を飲み込んだ。


「……しんちゃん……」
「まさおくん、正直に言うけど、今のキミは見てらんないよ。
ねねちゃんが好きなのは分かるし、盗られたくない
気持ちも分かる」
「……」


「……でもね、今のキミはあんまりだ。
話してもいないのに勝手に全部決めつけて……
そんな姿を見て、ねねちゃんがキミに好意を持つ
と思ってるの?」


「……そ、それは……」
「キミにはキミのいいところがあるんだ。
だから、もっと素直にねねちゃんと向き合いなよ。
……今度、オラとフタバ幼稚園に行こうよ」
「……うん。ありがとう、しんちゃん……」


まさおくんは、ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
正直、こんなことを言うのは忍びないところもある。
だけど、まさおくんのことを知るオラだからこそ、
言う必要があった。


でも最後は、まさおくんも分かってくれた。
それだけで、言って良かったと思う。
「……しんちゃんと一緒に、敵情視察だ……」
まさおくんは、ぼそりと呟く。


……分かってくれたんだよね?


それから数日後、オラとまさおくんは、フタバ幼稚園
に来ていた。
久々に見る幼稚園は、少しだけ古ぼけて見える。
あれから20年以上だし、それもしょうがないの
かもしれない。


それに、建物も校庭も、外の遊具も、物凄く小さい。
……それでも、独特の匂いと、踏み締める土の感触は、
昔のままだった。


あの頃オラ達は、この幼稚園で毎日を過ごしていた。
絵本を読んで、歌を歌って、絵を描いて、走り回って、
笑いあって、時々ケンカして……


ここに立つだけで、まるでモノクロの投影機のように、
昔の光景が脳裏に甦っていた。
「……懐かしいね、まさおくん……」
そう呟き、まさおくんを見る。


まさおくんは、まるで威嚇するかのように、
キョロキョロと見渡していた。
(……おい)


「……おや?キミ達は……」


ふと、オラ達のもとに、白髪のおじいさんが近寄ってきた。
「……あ、勝手に入ってすみません。
オラ……僕達は、ここの卒業生なんです。
久々に、遊びに来ました」


当たり障りなく、挨拶をする。
すると老人は、朗らかに笑った。
「……もちろん、覚えていますよ。
よく来てくれましたね、しんのすけくん、まさおくん」


園長先生は、優しく微笑む。その表情もまた、
昔のままだった。


「それにしても懐かしいですねぇ。もう、20年以上に
なるんですよね」


オラとまさおくんは、教員室に案内された。
室内には誰もいない。


遠くからピアノの音と、子供たちの元気な合唱が
聞こえていたから、おそらく授業中なのだろう。


「はい。顔を出せず、すみませんでした」
「いえいえ。あなた方が元気であれば、それで
私は満足なんですよ」


園長先生はニコニコとしていた。


口ではそう言っていても、やはりこうしてオラ達が
顔を出したのが嬉しいんだろう。
それにしても、園長先生の雰囲気はすっかり変わっていた。


昔の極道丸出しのような容貌はない。
太ったことも原因かもしれない。
とにかく、朗らかで、とても優しそうな印象を受ける。


園長先生の性格を考えるなら、今の姿が一番しっくり
くる気がする。


「ところで、突然園を訪れて、何か御用があるんですか?」
「あ、ああ……実は、ここで働いているねねちゃんとチーター
が働いてるって聞いたんで、懐かしくなって……」


チーターたちの様子を見に来たってのは、一応黙っておこう。


「あ、なるほど。…それなら、授業風景、見てみますか?」
「いいんですか!?」
オラより先に、まさおくんが反応を示した。
それまで黙っていたのに……なんとも、現金な奴だ。


園内をオラ達は歩く。あれだけ広かった建物は、時々
屈まないといけないところがあった。


こうやって大人になって見てみると、やはりどこか小さい。
それでも、この空気に触れるだけで、どこか心が躍る。


「……ここが、桜田先生のクラスですよ」


「ここが……」オラとまさおくんは、窓から中を覗きこむ。
「・・・はーい!じゃあ次は、紙芝居の時間ですよー!」
「ええ!?もっと歌いたい!!」


「私もー!」 「僕もー!」
「ごめんねぇ。今日はもうお歌は終わりなの。また明日ね」


「えええ…」 「ぶーぶー!」
「ゴチャゴチャ言ってないで紙芝居始めますよー」


子供たちの文句を押し切り、ねねちゃんは強引に紙芝居
を開始していた。


「……なんか、ねねちゃん、すごくパワフルですね」
「まあ……ね……。口は少々悪いですが、それでも
園児からは慕われていますよ」


「……ねねちゃん……カッコいい……」
続いてオラ達が案内されたのは――


「ここが、河村先生の教室です」


「河村……チーターの……」
オラとまさおくんは、教室の中を覗き込んだ。


「河村先生!絵ができたよ!」
「お!すごく上手だね!先生すごく驚いちゃったよ!」
河村先生!手伝って!」
「手伝うのはいいけど、最後は自分でしなきゃだめだよ?」


「河村先生!僕も!」
子供たちは、しきりにチーターを呼んでいた。
そこにいるのは、間違いなく、生徒から慕われた
優しい先生の姿だった。


「河村先生も、物凄く子供に懐かれていますよ。
やさしくて、かっこよくて……人気の的なんです」
園長先生は、満足そうにそう呟く。


その姿で、ひとつ確信したことがあった。


チーターは、心に黒い一面があったり、裏の顔が
あったりしない。ありのままの姿を見せている。


子供は敏感だ。少しでも隠していることがあったり、
得たいの知れない何かを持ってたりするなら、
絶対にああして笑顔で近づくことはない。


ありのままの姿を見せているからこそ、
子供たちは安心して、彼のもとに集まるんだ。


「……チーターは、いい先生ですね……」
「……ええ。本当に立派になりました。私は、
彼の園長であったことを誇りに思います」


俺の言葉に、園長先生は幸せそうに返事を返した。









祝日の日、静岡県でバレー部の部員とともに練習試合
に臨みました。


たくさんの学校と試合をし、多くの方に応援に来ていただき、
感謝の一日でした。


また、感謝といえば、この日はもう一つ、とても心温まる
できごとがありました。


練習試合が終わり、帰りの電車に乗ろうと、顧問の先生も
生徒も鷲津駅で切符を買おうとしていました。


自動券売機では販売していないほどの遠い距離で
あったため、 全員窓口で切符を購入しなければ
なりませんでした。


先生がまとめて立て替えて全員のチケットを購入するのが
手間もはぶけて効率的です。


実際に、学級や学年単位など大勢の場合は、まとめて
購入します


しかし、部活動の遠征などの際には、一人ひとりが自覚
を持って行動し、社会性やマナー等も身につけさせたい
という考えから、 一人ひとりが切符を買うように指導
しています。


ところが、窓口に並んだ列の2人前のお客さんが手続き
に時間がかかっているうちに、電車の到着時間がだんだん
と迫ってきてしまいました。


ただでさえ、県を超えての遠征で、帰宅時刻のことを考えると
電車を1本遅らせるわけにはいきません。 内心、非常に
焦りが募ってきました。


(やはり、まとめて購入すべきだったかなと)


その時です。すぐ前に並んでいた若い男性の方が、
「お急ぎですよね? 先に切符を買ってください」 と、
順番を譲ってくださったのです。


バレー部はその時全部で11人。


順番を譲るということは、その男性が切符を買えるのは
12番目になってしまうということです。


「いいんですか?」 と、顧問が尋ねると、
「困ったときはお互い様です。」 と言い、スッと後ろへ
移動されました。


たぶん、生徒全員がおのおのに切符を購入するという
意味合いも 理解してのことだと思われました。


その男性のおかげで、全員が無事切符を買いホームへ
向かうことができました。


バレー部全員で、その男性に向かって、
「ありがとうございました!」 と、精一杯の感謝の
気持ちを込めてお辞儀をし、あいさつをしました。


その男性は少し照れくさそうにはにかみながら、
ペコッと会釈を返してくださいました。


電車がそろそろ鷲津駅に到着する頃、後ろを見ると、 そ
の男性も切符を買い終わり、ホームに向かう姿が見えました。


同じ電車に乗るということは、その男性は家路を急いで
いたのかもしれません。


そんな中、もしかしたら、再び会うことはないかもしれない
私たちに、「困ったときはお互い様です」と言って、


順番を譲ってくださったその男性の温かさにとても
心打たれました。


「人情」に触れることができた帰り道となりました。


author:山田貞二(愛知県)


幸せがつづいても、不幸になるとは言えない  
不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない






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