妄想劇場・流れ雲のブログ

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妄想劇場・歴史への訪問







リリース:1991
音楽ロリーナ・マッケニットタンゴからエヴォラへ
映画:ミスター &スミス夫人








ある日の事、鬼は子どもの鬼を肩に乗せて、
山のふもと近くまで散歩していました。  


すると一人のおじいさんが小さな女の子の手を引いて、
トボトボとやって来ます。  


おじいさんは悲しそうにため息をつくと、空に手を
合わせておがみだしました。  


気になった鬼は、思わず声をかけました。


「じいさん、何をしとる?」  いきなり雷の様な声で
尋ねられたおじいさんがびっくりして顔を上げると、
頭上から恐ろしい顔の鬼が見下ろしています。


「ヒェーーッ!」  思わず腰を抜かしたおじいさんに、
鬼は少し声を小さくして優しく言いました。


「怖がる事はない。何をしとるか、言ってみな」
「はい。  わしらはこの下の浜辺の者で、みんな海で
働いております。  


だが、毎年夏になると海が荒れて、浜のみんなが
犠牲になります。  


この孫の両親も夏の大波にさらわれ、わしと孫は
二人ぼっちになってしまいました。  


そこで神さまに、もう海が荒れん様にと、お祈りして
いたところです」
「そうか、それは気の毒にのう」  


それからしばらくたった、ある日の朝。  


鬼が目を覚ますと、外は大変な嵐でした。  
鬼は、あのおじいさんの事を思い出すと、
うなり声をあげて立ちあがりました。  


そして鬼は、小山ほどもある岩に抱きつくと、
「うりゃあっ!」 と、岩を持ちあげて、ズデーン
と放り出しました。  


続けてもう一つの大岩も持ちあげ、ズデーンと
放り出しました。  


そして鬼は長い鉄棒で二つの岩に穴を開けると
団子の様に突き刺し、岩を通した鉄棒をかつぎ
あげて子鬼にやさしく言いました。


「おとうは浜へ行く。お前はここで待っとれ」


「いやだ、いやだ、おれも行く」
「・・・そんなら、この岩の上に乗れ」  


鬼は腰が砕けそうになるのをこらえて、一歩一歩と
山を下って行きました。  


浜では大波が白いキバの様に、ドドーッと押し
寄せています。  


村人が波に流されまいと、家や岩に必死でしがみ
ついています。  


鬼は子鬼に言いました。


「さあ降りろ、お前はここで待っとれ」
「いやだ。おとうと離れん」  


子鬼は首を振って、降りようとはしません。
「・・・ようし、そんなら泣くなよ!」  


鬼はそう言うと、海へ足を進めました。  
大波が狂った様に押し寄せ、鬼にぶつかってきます。  


すさまじい波に足を取られながらも、鬼は必死で
前に進みました。  


そして頭まで波につかった鬼は、岩の上の子鬼を
おぼれさせまいと岩を高くさし上げ、そのまま海に
入りついに姿が見えなくなってしまいました。  


波は鬼の体とさし上げた岩にさえぎられて、
やがて静かになっていきました。  


そしていつの間にか、鬼の体は岩になりました。


「おとう!」  岩の上の子鬼は、ワンワンと泣きました。  
泣いて泣いて泣き疲れて、その子鬼もとうとう小
さな岩になりました。  


今でもこの浜には二つの大岩と、その上にちょこんと
乗っている小岩があるそうです。


おしまい












えー、ご新造さんがお風呂へはいっていると、
かわいがっている猫のタマが、ニャアニャアと大騒ぎを
はじめましてナ。  


「おナベや、タマはどうしたんだい?」  
「ヘエ、もうバカなんでござえます。


さっき魚屋から赤貝を買ったんですが・・・」  
「あア、そうだったねエ、それで?」  


「タマが、それにチョッカイを出しましたもンだで、
赤貝が驚いてギュッとカラをを締めたんでごぜえます。


だもンだから前足ィはさまれて、へェ、大騒ぎで・・・」  


「まアま、かわいそうじゃないの、
え、面白がって見てちゃいけませんよ。


おまえ、ちょいとユカタ貸しとくれ。
それから、なンかコジあける物をネ。


・・・まアまア、タマや、バカだね、おまえ。
今、とってあげるよ」  


ご新造さん、裸身はだかにユカタを一枚フワリと羽織り
ましてナ、お手ずから、赤貝のカラをコジあけて、
とってやる。


「ホラ、とれた、痛かったでしょう、タマや・・・」  
と猫をフトコロヘ抱きあげると、


湯上りの肌でございます。猫がツーッとすべって、
ご新造さんの下腹へ落っこちて行きましたが、


とたんに、毛を逆立てて、 「フーウッ!!・・・」




道後の湯で源敏みなもとのさとるという好き者が
たっぷりつかっているとき、一人の尼法師が入湯して来た。  


上品でなまめかしい、抱きつきたいがそうはいかない。


そこでこっそり足を伸ばして、股ぐらとおぼしいあたり
をコチョコチョ、尼はびっくりして怒る。


敏はすかさず、 「とても世を よそに古江ふるえのあま小舟 
葦のさわりをなに厭いとうらん」と詠む。  


つまり遠浅の海で、海草とりをしている海女あま(尼)の舟が、
入江の葦(足)に触れたからといって、別に気にすること
はありますまい、という図々しい歌だ。  


尼さんもさすが歌よみ、半分オツな気分になったのか、  


「さらば早とく 棹さおさし寄せよ世の海の 海松布みるめ
(食用の海草)をなおも いとうあま舟」と返歌した。  


つまり、あたしはもう男を絶った尼。
人の見る目(海松布)が大変だから、


誰も来ないうちに、棹を私の舟にさしてごらん、
というのだから、これはどっちもどっち。 …


Creator:seiwa(話し方教室講師)






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