妄想劇場・流れ雲のブログ

趣味の、自己満ブログです。人生は、振り返ることは出来ても、後戻りは出来ない…掲載内容に問題がある場合は、お手数ですが ご連絡下さい。 迅速に対応させていただきます。

妄想劇場・森羅万象









歌:中島みゆき
作詞・作曲:中島みゆき


海鳴りが寂しがる夜は
古い時計が泣いてなだめる
遠く過ぎて行った者たちの
声を真似して 呼んでみせる








他人の不動産を担保にする男


ぼくはお金を貸すとき、原則として不動産を担保に入れて
もらいます。


担保があれば、お金を返せなくなっても不動産を売らせれば
回収できます。


不動産を担保にするときの抵当権には順位がありますが、
あまり気にしません。大丈夫です、回収します。
そこが街金の力の見せどころですから。


自分がお金を借りるんだから、普通は担保に差し出すのは
自分名義の不動産です。


でも、中には他人の不動産を担保にする人もいます。
自分では不動産を持っていなかったり、あるいは持って
いても担保にするのがイヤな場合に、他人の不動産
を自分の借金の担保にするんです。


他人の土地です。他人の家です。


ぼくらは貸したお金に利息をつけて返してくれればそれで
いいので、喜んで貸します。


でも、ほとんどの場合、ちゃんとお金を返してもらえ
ないので、担保の不動産を売らせたり、取り上げる
ことになります。


無償で自分の不動産を提供してくれる、そんないい人
が世の中にはたくさんいます。そして、そういういい人を
利用して、お金を借りまくる人も世の中にはたくさんいます。


Aさんを連れてお金を借りに来たBさんも、そういう人でした。


Aさんはアパートを3棟持っている大家さんです。
70歳くらいだと思います。


一方のBさんは不動産屋です。高級住宅街の駅前で
昔からやっている、いわゆる地場の不動産屋。


地主の人たちからアパートやマンションの管理を任されて
います。Bさんは、Aさんの持っているアパート1棟を担保
として、ぼくにお金を借りに来ました。


繰り返しますが、担保不動産の所有者はAさん、
お金を借りるのはBさんです。


いったいなんで、自分の不動産を他人の借金のカタに
するのか。ちっとも理解できません。


Aさんが何か弱みを握られているのか。


「今度、私が手がける事業がうまくいけば、すごく儲かるん
だけど、ちょっとだけ資金が足りないんだ。


協力してくれない? お礼はたんまり」
Bさんの素晴らしい話術に、実は欲深いAさんが乗って
しまって担保を提供してしまうのか。


いずれにしても、Bさんは特殊能力を備えているんだ
と思います。ぼくはBさんのこと、「担保提供の魔術師」
と呼んでいます。


さすがAさんのような優良資産家が持っている不動産だけ
あって、権利関係はとてもきれい。ぼくが1番抵当を
取れるんです。


借りた金は返さない、返さなくてもなんともない人


トントン拍子に進む契約。それは突然のことでした。
「Aさん、ではあなたのアパートに1000万円の抵当権
を設定しますので……」


「ああああああ、テツクルさん! そうそう! あれ!」
「は? Bさん、何なの?」


「あれ、えっとですね、あれ! ちょっといいですか!」
Bさんに部屋の外に連れ出されるぼく。


部屋に取り残されるAさん。


「……ええとですね、すいません、わたしが借りる額のこと、
Aさんに内緒にしてもらえます? ほら、1000万借りるとか
言っちゃうと断られちゃうんで」


「は? 無理だよ、そんなの。ちゃんとAさんにもサインして
もらう書類あるんだから」


「そこをなんとか、なにとぞなにとぞ……」
「はー? 無理無理無理」


押し問答をしながら部屋に戻ると、不審げにこちらを
見るAさん。


「あ! 大丈夫! 全然大丈夫!」
Bさんが汗だくでAさんに言い訳をします。


「えーっと、じゃあもう一度説明しますね。
Aさんが担保提供するアパートに1000万の……」


「おおっと、テツクルさん! なんか冷房弱くないですか!
汗止まらなくて!」


「いいですけど……というか声大きいすよ。聞こえるから」
「ああっと! ごめんごめん! 電話かかってきた!
ちょっと待ってて!」ボタボタ汗をかきながら部屋を出るBさん。


部屋に残されたぼくとAさん。Bさんの不審な行動もあり、
気まずい沈黙が流れます。


「Aさん、暑いですか?」
「……いえ、大丈夫です……ちょっとBさんと話してきても
いいですか?」


AさんもBさんを追って部屋を出てしまいました。
ぜんぜん帰ってきません。


話がもめて、帰っちゃったかな。でも荷物は置いた
ままだしな。会社の前でもめごと起こされたら
恥ずかしいな……。


しばらくして、AさんとBさんが戻ってきました。
まだ話はまとまってないようでした。


「だから話が違うじゃないか、さっきの人、1000万って
言ってた」


「いや、違うんだって。実際はそんなに借りないから! 
安心して!」


「じゃ1000万って何なの?」
「あれはね、1000万まで貸してもらえるってだけで、
そんなに借りないから!」


「本当に⁉」
「当たり前でしょ! ぼくがAさんのこと騙したことある? 
ないでしょ?」


部屋の入り口で話してるから全部聞こえます。


Aさんは半ば諦めた様子で、
「はいはい、わかりました。ハンコ押せばいいんでしょ」
そう言って、担保提供の契約書にハンコを押して
くれたので、無事Bさんに1000万円貸しました。


全財産失っても「カネ貸して!」の人って・・・


Bさんは担保提供の常習犯なんです。定期的に
ぼくのところへ話を持ってきます。


「ちょっとテツクルさん、聞いてよ!」
「どうしたの?」


「こないだ借りた、よその街金ひどいんだよ!
結局、名義取られちゃってさ!」


「Bさんのものじゃないのにどうするの?」
「まあ、担保提供してくれた人は大丈夫。
俺が絶対買い戻すからと宣言してるから」


「買い戻せるの?」
「まあ今度、高尾の2万坪を仕入れて分譲するから、
それで返せるよ、大丈夫」


「高尾の山奥分譲して誰が買うんだよ……」
「仕入れるお金、貸してもらえない?」


Bさんは担保提供で借りたお金を、ほかの債務の
利払いや生活費にあてて、本業の不動産業の
売上げは散々です。


「テツクルさん、ごめん!」
「何?」
「こないだ話した担保提供者、口説けなかったわ! 
また次探すから!」


そんなBさんですが、ついに担保提供者のネタ切れ。
虎の子だったBさんの自宅もいまではぼくの会社の
名義になりました。


Bさんは家賃を払って元自宅に住んでいます。


そんなBさん、自宅だけでなく息子や義理の息子の
自宅まで、一族郎党の所有不動産を最終的に売る
ことになったり、ぼくの会社の名義になったりで、
すべてを失いました。


Bさん包囲網も最終段階だと思ってました。


でも、あいかわらず電話がきます。
「テツクルさん! いい物件みつけた!
仕入れ資金貸して!」・・・


(次回につづく) 街金が絶対にお金を貸せない条件











「しんちゃん。ねねちゃん」
どこかで聞いたことのある、緩い声。その声の主は……
後ろを振り返ると、そこにはぼーちゃんがいた。


「あれ?ぼーちゃん、今帰り?」
「うん。二人は、何してるの?」


「しんちゃん、今日、フタバ幼稚園に遊びに来てたのよ。
……ねえぼーちゃん、せっかくだし、三人で帰りましょう」
「うん。帰ろう」


ぼーちゃんは、笑顔で返事を返す。
そしてぼーちゃんとねねちゃんは、オラの前を歩き始めた。
楽しそうに会話をする二人。


ぼーちゃんはさることながら、ねねちゃんの笑顔には、
どこか見覚えがあった。


幸せそうに、朗らかに笑うその笑顔……それは、確か
さっき幼稚園で見た……(………………まさか……)


……オラは、思い込んでいたみたいだ。
ねねちゃんが気になっているのが、まさおくんかチーター
である、と……


まさか……ねねちゃんが言ってた、“気になる人”って…
オラの中で、バラバラのパズルのピースが、一つになった。


そんなオラの前を、ねねちゃんとぼーちゃんは並んで歩く。
とても、幸せそうに……


……さすがのオラも、まさおくんに同情するしかなかった。
確実に彼は今、かすかべ一の、不幸な青年であるのだから


オラ的まさおくんの悲劇から、1ヶ月ほどが経過した。


まさおくんは、いまだにねねちゃんの本当の気持ちに
気づいていないようだ。


そういう言い方だと、実はねねちゃんがまさおくんを
好きなように聞こえるが、そういうわけではない。


日本語とは、同じ言い方でも様々な意味合いを持つもの
だと、一言添えておくことにする。


さて、オラはというと、会社であいちゃんが重役会議に
出席している間に、あいちゃんの仕事部屋の掃除
をしていた。


もっとも、もともと綺麗な部屋なわけで、掃除といっても、
ビッカビカの机をさらに磨き上げるように拭くしかない
のだが……


それはそうと、最近あいちゃんの機嫌が悪いことが
多々ある。


黒磯さんに強く当たるし、たまにオラにも飛び火している。
いったいぜんたい何事だろうか。


会社の経営は順調そのもの。


あいちゃんの企画した事業も大当たり連発。
その見事な手腕を発揮させ続ける彼女は、成功とは
裏腹に、時折思いつめたような表情をしている。


ボディーガード(ほぼ執事)としては、少しばかり心配
なのは、言うまでもないだろう。


オラがコーヒーを作っていると、重苦しい音を上げて
ドアは開かれ、あいちゃんは帰ってきた。「………」


あいちゃんは、やはり不機嫌な様子だ。


一直線に椅子に向かい、どかりと重い音を鳴らしながら
座り込む。


「……はあ」
そして、やはりここでため息を一つ。
このコンボは、最近のあいちゃんの鉄板なのだ。


「……お疲れ様」
そんなあいちゃんに、オラは笑顔でコーヒーを差し出す。
「あ……ありがとうございます。しんのすけさん」


あいちゃんも笑顔でコーヒーを受け取るが、その笑顔は、
どこか無理やり作っているようにも見えた。


それを証明するかのように、オラから視線を外すや
いなや、あいちゃんは再び、重い表情に戻していた。
どうするか迷ったが、オラは直接聞いてみることにした。


「……あいちゃん、最近疲れてるね……。
何かあったの?」


「……少し、思うことがありまして……。
いつも気を使わせてしまって、申し訳ありません……」


「いや、それはいいんだけど……何か悩んでいるなら、
オラにでも相談してよ。出来る限り力になりたいし」
(本当に力になれるかはなんとも言えないけど……)


「……ありがとうございます、しんのすけさん」
あいちゃんは、再び力ない笑顔をオラに向けた。


何に悩んでいるかは分からない。


だけど、オラは彼女のボディーガードであり、友達でもある。
相談してくれるかは分からないけど、もし言ってきた場合は、
出来る限り力になろうと決意する。


……そう思った、わずか数日後のことだった……


「え~!?あいちゃんが行方不明!?」
「はい!送迎係の者が、少し目を離した隙にいなくなって
しまったようで……」


会社に出勤したオラに、秘書の女性が慌てながら
伝えてきた。


あいちゃんが、どこにいるか分からないという。


「GPSとかであいちゃんの場所は分からないんですか?」
「それが、あい様はGPS機能つきの携帯電話、バッグ、
靴等をすべておいて行ってしまっているようで……」


(靴にまで……さすがはあいちゃん……)
などと感心している場合ではない。


いなくなったのは自宅敷地内から。
そして、寸前まで送迎の車に乗車していた。


状況から考えるに、誘拐の線は薄いだろう。
あいちゃん自らが、どこかへ行った
そう考えるのが、妥当だと思う。


ではいったい、彼女はどこに行ってしまったのか……
手がかりは、今のところない。


酢乙女家の監視体制を熟知している彼女にとって、
その目を逃れるのは容易いのかもしれない。


「……とにかく、オラも探してみます」
「は、はい!よろしくお願いします!」









ある朝、清水亭の店主Sさんが出勤すると、入口の鍵が
バールのようなもので壊され泥棒に入られていました。


被害を調べると、レジの現金が十数万円。


しかし、それだけでなく、前夜に仕込んでおいたサラダ、
大根の漬物、きんぴらごぼうの3種類の総菜が冷蔵庫
から消えていました。


普通なら、頭に来て「絶対、犯人を捕まえてやる」と
思うところでしょう。


しかし、「清水亭」のS店主はこう思ったそうです。


「これって、本当にやりたくてやったことなのだうか?」
冷蔵庫の中には約50種の食材があったのに、盗まれた
のは調理済みで、すぐに食べられるものだけが
無くなっていたからでした。


このコロナ禍で失業率が上がり、食べていけなくなった
人が大勢いる。


きっと、その一人に違いない。


そういえば・・・近隣で他の飲食店にも深夜の空き巣が
何軒も起きおり、はやり同様にすぐに食べられる食材が
盗まれていると聞いていました。


そこで、S店主は、定価500円のお弁当を無料で
差し上げる活動を始めたのです。


驚きました。泥棒を「かわいそう」と思う気持ちにです。


こんな言葉があります。「罪を憎んで人を憎まず」
そんな言葉を実践する人が今の世にもいることが
嬉しくてたまりませんでした。


テレビのワイドショーでも、SNSでもコロナ禍について
のさまざまな意見が発信されています。
今日も、コロナ禍についてコメントしています。


「意見」を自由に言えることは、生きる上で大切なことです。
でも、「思う」だけ、「言う」だけなら誰にでもできる。


「実践」することは、それ以上に貴重なことだと思うのです。


頑張れ!清水亭!!
そして、頑張れ!つらいけど頑張っている人たち!!



幸せがつづいても、不幸になるとは言えない  
不幸がつづいても、幸せが来るとは限らない






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