妄想劇場・流れ雲のブログ

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韓信 [シリーズ] 砂漠を行き、草原を駈ける・関外追放















韓信 [シリーズ]
砂漠を行き、草原を駈ける ・関外追放


かくして我々は、ついに敦煌に入城した。
敦煌の風景は西域とさほど違わず、気候もたいして変わ
らない。しかし我々は確かに帰還したことを実感したのである。


李夫人を失いかけた皇帝は、その病床を何度か見舞ったが、
夫人は最後まで顔を隠したという。


彼女は以下のような言葉を残している。
「我以容貌之好,得從微賤愛幸於上
(私は顔がよいために卑賤のみから主上のご寵愛を受ける
ことができたのです)。
夫以色事人者,色衰而愛弛,愛弛則恩絕
(容色で人に仕える者は、
それが衰えれば愛は弛み、愛が弛めば恩は絶えます)。」


彼女は自分自身に、生き存えて年をとることも許さなかった
かもしれない。


敦煌は心の安まるところだった。
太守の尹慈は我々のことを快く出迎え、厚いもてなしで
長旅の疲れを癒やした。


欣怡は李広利だけでなく、兵卒のひとりひとりに気を遣い、
かいがいしく世話をした。


怪我をしている者や、体調を崩している者もいたが、この
ときの我が軍は明るく幸福な光に包まれていたと言える。


「唯一の気がかりは、皇帝陛下がどのように我々を迎えて
くださるか……そのことだけだ」  


今回の遠征は失敗と言って差し支えなかったが、李広利
には言い分がある。次の遠征があることを前提に李哆を
偵察のために残しているうえに、自分自身が得た経験も
貴重なものである。


次の機会には必ずや成功させる自信が彼にはあった。  
また妹の李夫人が死んだことは、残念なことには違い
ないが、彼には有利なことでもある。


そのような不幸が起きたあとでは、遺族である李広利を厳しく
弾劾しようとは皇帝も考えまい。


妹は、死ぬ間際に私と延年の栄達を陛下に頼んだという
ではないか。陛下の妹に対する愛が深かったとしたら、
きっと邪険には扱わないはずだ。


そう考えた李広利は、あれこれと気を回すことをやめて、
極力緩やかな日々を送ろうとしていた。


砂漠の過酷な環境に晒された自らの体を癒やし、春のまだ
穏やかな日の光を浴びて、健康的に日々を過ごそうとしていた。


「将軍さま」  宿舎の庭を眺めながらぼんやりと時を過ごして
いた李広利の背後から、呼びかける声がした。


振り向いた李広利は欣怡の姿を見つけ、思わず驚きの声を
上げた。彼女の髪の毛が肩までの長さしか無くなっていた
のである。


「欣怡。どうしたのだ、その髪は」  問われた欣怡は恥ずかし
そうな笑みを浮かべ、もじもじとしながら説明した。


「その……日差しですっかり髪の毛が傷んでしまって……
縮れてしまったので、思いきって切ってしまったのです。
お気に召しませぬか?」  


そのように問われると、否定的な返答はしづらいものである。
しかし、返答を迷う必要も無かった。もともと彼女は明るく
快活的な性格であったので、実のところ李広利は、
短い髪が欣怡にはよく似合うと思ったという。  


だが彼は、人生でこのような短い髪型の女性に出会った
ことがなかった。大人の女性は髪を伸ばし、それを美しく
編んで纏め上げるものである。


欣怡の行為は、常識から大きく外れていた。
「異国風だな。かといって西域の女性にもそれほど髪の
毛を短くしている者はいなかったが……


正直驚いたが、美しいぞ。実に素敵だ」  欣怡は顔を
赤らめた。 「あら、そんな。恥ずかしい……でもよかった。
怒られたらどうしようと思っていたのです」


「お父上は何も仰っていなかったか。いや、きっと太守は
君のことを目に入れても痛くないほど愛しているだろうから、
文句を言わないだろうな」  


欣怡は声を上げて笑った。その様子を見ると、どうやら
ひとしきり太守から小言を言われたようである。
李広利も笑った。


「お父様からは叱られましたが、将軍さまが褒めてくださった
ので安心しました。


お父様ったら、ひどいのですよ。そんなおかしな髪型では
誰もが愛想を尽かす、なんてことを言うんです」
「いずれ髪はまた伸びるというのに、


お父上も厳しいことを言うものだな。だが、少なくとも私は
その髪型を認めている。


目新しくて、前よりもいい印象だ」  欣怡は安心したように
微笑み、李広利の隣に座った。


そして言う。 「将軍さま、西域での出来事を詳しく
お教えください」  李広利はやや戸惑ったようであった。


「君がそれを聞いても楽しくはなかろう。なぜ聞きたい
と思うのだ」  そのとき欣怡は、急に表情を深刻なもの
に変えた。


彼女はひどく彼にとって厳しい現実を伝えなければ
ならなかったのだ。


……









自然界では、なぜメスよりもオスのほうが生存しづらいのか?


動物の中には性の分化が曖昧な種もいます。
カタツムリは1個体の中にメスとオスの両方の生殖細胞を
備えており、1匹で卵子も精子も作れます。


そんな2匹のカタツムリは出会うと合体して、お互いの精子を
交換して受精を行います。これを雌雄同体といいます。


雌雄同体は一般的に貝類やウミウシ、ナメクジ、ミミズなど
移動能力が乏しい種に多いとされます。


こうした動物たちの場合、もし、雌雄が二極化していたら、
一生懸命移動しても出会った相手が同性だったときの
ガッカリ感というか、ダメージは絶大です。次の相手を
見つけ出すまでに寿命が来てしまうかもしれません。


だからお互いがメスとオスの両方の役割を果たせるように
進化したのでしょう。


なぜカクレクマノミは「性転換」するのか?


アニメ映画で人気者になったカクレクマノミは性転換する
魚です。最初は全員オスとして生まれ、集団の中でいちばん
大きな個体がメスに性転換します。


そしてその次に大きなオスの個体と交尾をする。
小さくてつねに天敵の脅威にさらされるクマノミとしては、
オスの多くを犠牲としながら、最大限にたくさんの卵を
残せるいちばん大きなメスを1匹だけ残しておくという
戦略をとったのでしょう。


逆にホンソメワケベラという魚は、最初はみんなメスで、
群れの中で体がいちばん大きな個体だけがオスになって、
周りのメスを従わせます。


このケースでは大きくて強い個体が縄張りを守って、
たくさんのメスを囲うことでたくさんの子孫を残すという
戦略をとったものと考えられます。


子育ての必要性の高い鳥類や哺乳類では、メスとオスの
分業はより進んだものとなり、雌雄同体の種や性転換する
種はほとんど見られません。


オスは縄張りを守ったり、エサを捕まえてきたりと、子孫繁栄
に重要な役割を果たします。


一方で、子どもを生まないオスというのはメスから見れば、
遺伝子の運び屋にすぎず、資源の無駄飯食いにもなります。


とくに環境が安定していて、決まった遺伝子型さえコピーして
いればいいのであるならば、オスは不要になってしまいます。


進化の途上で、有性生殖をやめたと思われる生物がいます。


カブリダニというダニを食べる肉食性のダニは、もともとの
オスの個体が少数です。このオスはメスと交尾して、受精
させますが、受精卵が育つ過程でオスの精子の遺伝子は
溶けてなくなってしまいます。


結局メスのクローンが生まれてきて、オスの遺伝子は1つも
入っていません。 このような形態を偽産雄単為生殖と
いいます。


オスの遺伝子は使ってもらえないのですが、オスと交尾しない
とメスは次世代のメスを生むことができません。なので、
オスの受精が胚発育のスイッチの役割を果たしているの
ではないかといわれています。


ダニの多くは有性生殖をしており、カブリダニももともと
有性生殖をしていたと思われます。しかし、彼らの生息環境
において、それほど変異を必要としなくなったのかも
しれません。


そうなってくると、メスとしてみれば子どもを生まないオスを
生産することは無駄になってきます。で、「もうオスを作るの
はやめようかな~」と進化している途中の段階がこの
偽産雄単為生殖という中途半端な生殖様式なのではないか
と考えられます。


これは、無性生殖=クローン繁殖の一歩手前の段階です。
いよいよオスが一切不要という環境に適応すればクローン
繁殖が始まると予測されます。


このようにカブリダニという種は、生殖の進化の過程が観察
できる重要な生物ではないか、と考えています
(実際にその進化プロセスは、詳細な系統関係の分析が
待たれます)。


環境が安定していれば、オスは無駄になります。


そうなってくるとあまりオスを生まない系統のほうが子孫=
遺伝子を残すうえで有利になってくるし、いっそメスしか生まない
系統のほうが繁殖戦略上、いちばん効率がよくなって、
単為生殖へと進化することになります。


ただし、単為生殖だと、もし天変地異が起こって食料がなく
なったり、水がなくなったりなどの劇的な生息環境の変化が
生じたら、間違いなく絶滅するリスクは高くなってしまいます。


カブリダニも今はいいけれど、将来、何か起これば絶滅して
しまうかもしれないのです。そう考えたらカブリダニは、せっかく
進化させてきた有性生殖を捨てて偽産雄単為生殖へと
鞍替えして、「退化」=「進化の逆行」をしていると見えるかも
しれません。


でも、実はこれも進化なのです。


「進化」という言葉は、「進む」という字が入っているから優れた
ものに変化すると思われる人も多いようですが、そうじゃ
ないんです。


生物がどのように進化するかは、すべては環境が決める
ことです。そのときの生息環境において不利な形質=
遺伝子は排除される。


その環境で生き抜くうえで必要な形質であれば、より特殊化
する。それまで有利だった形質が、環境の変化とともに
消失する。あるべき形質・機能が姿を消す。
人はそれを「退化」と呼びますが、それも進化です。


なぜ人類から「尻尾」が消えたのか


そう、太古の昔、人類にあったはずの尾がなくなったのは、
進化なんです。必要がなくなったから、尾がないほうに進化
したんです。


洞窟など、暗黒下で生息する動物の多くの目が退化している
のも、利用価値のない目を作る資源やエネルギーをほかの
器官や細胞の成長に回したほうが得だということで目を
作らない方向に進化したのです。


しかし、洞窟という生息環境が失われれば、目がないことが
不利になって、絶滅してしまう種も出てくると考えられます。


そのときそのときの環境で有利・不利が決まり、それまで
圧倒的多数を占めていた形質や系統が突然消滅する。
それが生物の進化の原理なのです。


結局、子どもを生むという機能がメスにある限り、メスが
消滅することは絶対にありません。


しかし、オスの方は、精子の運び屋にすぎないので、
すべてのオスが生き残る必要はなく、最悪、ゼロになる
(無性生殖)という憂き目にあうおそれもあります。


オスが生殖にたどり着き、自分の遺伝子を残せるか否かの
命運はメスに握られているのです。


メスによる淘汰=「性淘汰」。


生殖の競争というのは、優秀な遺伝子の取り合いになって
います。生物にとっては、別種はおろか、同種であっても、
すべて他個体は敵で、とにかく他個体よりも自分の遺伝子を
少しでも多く残すことが重要となります。


このときメスとオスの間には不平等が生じます。
子どもを生むことができるメスは圧倒的にオスにモテます。
なぜならオスは子どもを生めないから。


なので、オスはなにがなんでもメスを確保する必要がありますし、
できれば少しでも多くのメスに自分の精子を与えることが
自分の遺伝子のコピーを増やすことにつながるので、
すべてのメスは、確実にオスに求められるのです。


一方のオスは、必ずしも全員がモテるわけではありません。
メスにしてみれば、オス全員を受け入れる必要はなく、
むしろ自分の卵子に少しでもふさわしい優秀なオスにだけ
交尾をさせて、「エリート」な子ども(つまり、生き残る力、
繁殖する力の強い子ども)を生むほうが、最終的に自分の
遺伝子のコピーをこの世に広げるうえで得になります。


そこで、メスはオス同士の間で力比べをさせて、オス間競争
に勝ち残った強いオスだけを選ぶように進化します。
これがメスによるオスの淘汰=「性淘汰」といいます。


オスは「使い捨て」の存在


百獣の王ライオンの群れのリーダーは、成熟したオスです。
リーダーは数頭〜十数頭のメスを従えたハーレムを形成
します。


オスがメスを従えていると書きましたが、実際にはメス
集団が強いオスを1頭だけ選んでいるのです。


強さはオス同士のケンカで決まります。
メスにとっては、広い縄張りを確保できる強いオスの遺伝子
があれば、自分の子どももまた強い個体となって生き残る
確率が高くなると期待できます。


もし、逆にメス同士に争いをさせるとどうなるでしょう。
争いに負けたメスは、群れを去るか、殺されてしまうことに
なります。


種全体にとってメスを1頭喪失するのは大きな問題です。
オスが1頭いなくなるのはたいしたことじゃない(笑)。
そういう意味でもオスは使い捨てなんですね。 ・・・・






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