妄想劇場・流れ雲のブログ

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韓信 [シリーズ] 砂漠を行き、草原を駈ける・西域を立ち去る







アングラ小説です、不快感がある方は、読むのを中断して
下さいメジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、
良いかな・・・






紀元前104年、長安の遊民であった李広利は突如大宛攻略
の命を皇帝から受けた。大宛とは西域の果てにある
未知の国。そこに たどり着くまでには天まで届く山脈、
さまよえる湖、広大な砂漠、果てしない草原……


さまざまな障害が彼の前に立ちふさがる。そこに生きる
人々との出会いは 希望に満ちたものか、それとも幻滅か
  ・・・


韓信 [シリーズ]
砂漠を行き、草原を駈ける ・西域を立ち去る


「火矢が……」


何者かがこの館を取り囲んでいるらしい。
イルシとコウカスコの逐電によって状況を半ば把握していた
私と李広利はさほど慌てることがなかったが、このとき李淑は
目に見えて焦りの色を顔に浮かべた。


「縄をといてください。
このままでは皆殺しにされてしまいます」
「誰にだ」 必死の口調の李淑に対して、李広利は冷たく
問い返した。


「館を取り囲んでいるのは匈奴です。彼らは、あなた方を
捕らえようと待ち構えているのです」


「それを手引きしたのは誰だ」「イルシとコウカスコに
決まっています」「さっき貴様はあの者たちと関わり合った
ことなどない、と申したではないか。なぜそのように
断言できるのか」


「彼らが匈奴だということぐらいは知っています。
そのくらいは容易に想像できることです」
「では、それを確認しに行こう。貴様には、軍の先頭に
立ってもらうぞ」


「……………」 
李広利は縛られた李淑を駆り立て、館の外へと連れ出した。
すでに館には火の手が回っており、部下の兵たちは外へ
退避している。


「物音を立てるな」部下たちにそう命じると共に、李淑には
猿ぐつわをした。しかし館周辺はすでに包囲されている。


私は、李広利にこの局面をどう打開するつもりなのか
確認する必要があった。


「館が焼失すれば、匈奴兵が押し寄せてくるだろう。
奴らの目的は、この私の捕縛だからな。しかし奴らは、
我々がこうして待ち構えていることを知るまい。


相手の兵数は不明だが、そもそも西域はからの状態に
なっていたはずだから、そう多くはないだろう。こちらの
兵数が上回るようであれば迎撃して殲滅し、向こうが
上回るようであれば間隙を縫って脱出する」


そのとき炎で館が覆い尽くされた。我々はその炎の光で
存在を気づかれないよう身を低くし、暗がりを見つけて隠れた。


「軍正」李広利は趙始成を呼び寄せ、短い言葉で命令
を伝えた。「李淑を殺せ」「御意」趙始成は、やはり経験
豊かな軍人であった。


このとき彼は、理由を問わず、上官の指示に疑念を表明
することなく、いささかも躊躇うことなく行動に移った。
縛られた李淑は趙始成の弓矢によって心臓を射貫かれ、
あっけなく命を落としたのであった。


「この男の利用価値はこれから高まる……。
-数人で遺体を匈奴の陣営に届くよう掘り投げよ。
それに続いて攻撃を加える」


李淑は見せしめとなるのであった。我々を売り飛ばそうとした
行為に対しての、痛烈な罰である。そして匈奴の陣営の前に、
無残な姿と変わり果てた李淑の体が投げ込まれた。


どさり、と目の前に落ちたその物体が李淑の遺体だと判明し、
何事かと匈奴兵たちがざわめいた瞬間に、漢兵の突撃が
開始された。 


片腕しかない遺体が李淑のものであることは、暗がりにいる
匈奴兵たちの目にも明らかであった。


彼らは主導者の死に憤慨し、また驚愕したが、そのため
間髪を入れずに突入した漢兵に対応することがやや遅れた。


「イルシとコウカスコを捕らえよ!」優勢に立った李広利は
大声で指示を発した。


火矢によって館を焼失させたことで、有利に戦況を展開して
いたと踏んでいた匈奴は、総崩れとなった。元来、匈奴は
勝ちに乗じた戦いは得意だが、敗勢に立つとこらえ性がない、
とされている。


このときも彼らは状況を打開しようとはせず、李淑の遺体を
回収することもせずに、逃げ延びることに尽力していた。
しかし李広利は、イルシとコウカスコにだけはそれを許さず、
捕らえて口を割らせようとしたのである。


しかし暗がりの中で見慣れない匈奴兵たちを判別するのは
非常に困難である。言葉も通じなければ、彼らがどのあたり
にいるかという手がかりさえもなかった。


結局匈奴は四散し、イルシとコウカスコの行方も知らぬまま
に終わった。取り逃がしたのである。李広利は臍ほぞを
噬んだ。しかし私には、彼がなぜそのように悔しがるのか、
理由がわからなかった。


「彼らは僮僕都尉の配下に過ぎぬ身分で、生き残ったところで
我々の脅威になるような人物だとは思えません。
将軍にはどうしてそのように……?


李広利は答えて言った。
「私は李淑を殺したが、奴は最後までその胸の内の企みを
口にしなかった。つまり私は状況のみで判断し、推測で奴を
処断した、ということになる。


概ねその判断に誤りはないと思っているのだが……。
イルシとコウカスコに対しては、見つけ出して殺したいと
思っているわけではない。その口から私が下した処断に
対する裏付けが欲しかったのだ。


私の判断が誤っていなかったか……それについての確証
を得たかった」つまり、李広利は李淑を殺したものの、
その判断に関してはもやもやした気分を除けなかった、
ということらしい。


しかし、それはもう叶わないことであった。
疑わしき者を除き、一見旅程は安全を確保されたものと
思われたが、李広利はこのとき事態を憂慮したのである。


「できることなら、もう少し敦煌に近い場所で李淑を排除
したかったのだが……奴が死んだことで、このさきの
危須国や尉犁国での拠点が失われた。


まだ李淑には利用価値があったのだが、奴がこの地で
匈奴を招いたがために、処断を早めなければならなかった。
かえすがえすも惜しい」
……











子育てをする無脊椎動物、


タコ タコのお母さんというと、何ともユーモラスでひょうきんな
感じがする。


イメージとは、怖いものである。 タコは、大きな頭に鉢巻を
しているイメージがあるが、大きな頭に見えるものは、
頭ではなく胴体である。


映画『風の谷のナウシカ』に王蟲(おうむ)と呼ばれる
奇妙な生き物が登場する。王蟲は体の前方に前に
進むための脚があり、脚の付け根の近くに目のついた
頭があり、その後ろに巨大な体がある。


じつはタコも、この王蟲と同じ構造をしている。つまり、
足の付け根に頭があり、その後ろに巨大な胴体が
あるのだ。ただし、タコは前に進むのではなく、後向き
に泳いでいく。


タコは無脊椎(むせきつい)動物の中では高い知能を持ち、
子育てをする子煩悩な生物としても知られている。


海に棲む生き物の中では、子育てをする生物は少ない。
食うか食われるかの弱肉強食の海の世界では、
親が子どもを守ろうとしても、より強い生物に親子もろとも
食べられてしまう。


そのため、子育てをするよりも、卵を少しでも多く残すほうが
よいのである。


魚の中には、生まれた卵や稚魚の世話をするものもいる。
子育てをする魚類は、とくに淡水魚や沿岸の浅い海に
生息するものが多い。


狭い水域では敵に遭遇する可能性が高いが、地形が
複雑なので隠れる場所はたくさん見つかる。そのため、
親が卵を守ることで、卵の生存率が高まるのである。


一方、広大な海では、親の魚が隠れる場所は限られる。
下手に隠れて敵に食べられてしまうよりも、大海に卵を
ばらまいたほうがよいのだ。


タコはメスが子育てする珍しい生物


子育てをするということは、卵や子どもを守るだけの
強さを持っているということなのである。


また、魚類では、メスではなく、オスが子育てをする
例のほうが圧倒的に多い。 オスが子育てをする理由は、
明確ではない。


ただし、魚にとっては卵の数が重要なので、メスは育児
よりも、その分のエネルギーを使って少しでも卵の数を
増やしたほうがよい。


そのため、メスの代わりにオスが子育てをするとも
推察されている。 しかし、タコはメスが子育てをする。
タコは母親が子育てをする海の中では珍しい生き物
なのである。


一生に1度の大イベント


タコの寿命は明らかではないが、1年から数年生きる
と考えられている。そして、タコはその一生の最後に、
1度だけ繁殖を行う。


タコにとって、繁殖は生涯最後にして最大のイベント
なのである。


タコの繁殖はオスとメスとの出会いから始まる。
タコのオスはドラマチックに甘いムードでメスに求愛する。
しかし、複数のオスがメスに求愛してしまうこともある。


そのときは、メスをめぐってオスたちは激しく戦う。
オス同士の戦いは壮絶だ。何しろ繁殖は生涯で1度
きりにして最後のイベントである。


このときを逃せば、もう子孫を残すチャンスはない。
激高したオスは、自らの身を隠すために目まぐるしく
体色を変えながら、相手のオスにつかみかかる。


足や胴体がちぎれてしまうほどの、まさに命を懸けた
戦いである。 この戦いに勝利したオスは、改めてメスに
求愛し、メスが受け入れるとカップルが成立するのである。


そして相思相愛の2匹のタコは、抱擁し合い、生涯でたった
1回の交接を行う。タコたちは、その時間を慈しむかのように、
その時間を惜しむかのように、ゆっくりとゆっくりと数時間
をかけてその儀式を行う。


そして、儀式が終わると間もなく、オスは力尽き生涯を
閉じてゆく。交接が終わると命が終わるようにプログラム
されているのである。


残されたメスには大切な仕事が残っている。 タコのメスは、
岩の隙間などに卵を産みつける。 ほかの海の生き物で
あれば、これですべてがおしまいである。


しかし、タコのメスにとっては、これから壮絶な子育てが
待っている。卵が無事にかえるまで、巣穴の中で卵を守り
続けるのである。


卵がふ化するまでの期間は、マダコで1カ月。
冷たい海に棲むミズダコでは、卵の発育が遅いため、
その期間は6カ月から10カ月にも及ぶといわれている。


これだけの長い間、メスは卵を守り続けるのである。
まさに母の愛と言うべきなのだろうか。


この間、メスは一切餌を獲ることもなく、片時も離れずに
卵を抱き続けるのである。


「少しくらい」とわずかな時間であれば巣穴を離れても
よさそうなものだが、タコの母親はそんなことはしない。
危険にあふれた海の中では一瞬の油断も許されないのだ。


もちろん、ただ、巣穴の中にとどまるというだけではない。
母ダコは、ときどき卵をなでては、卵についたゴミやカビ
を取り除き、水を吹きかけては卵のまわりの澱(よど)んだ
水を新鮮な水に替える。


こうして、卵に愛情を注ぎ続けるのである。
ふ化まで卵を守りとおす母ダコ は餌を口にしない


母ダコは、次第に体力が衰えてくるが、卵を狙う天敵は、
つねに母ダコの隙を狙っている。また、海の中で隠れ家
になる岩場は貴重なので、隠れ家を求めて巣穴を
奪おうとする者もいる。


中には、産卵のためにほかのタコが巣穴を乗っ取ろうと
することもある。 そのたびに、母親は力を振り絞り、
巣穴を守る。


次第に衰え、力尽きかけようとも、卵に危機が迫れば、
悠然と立ち向かうのである。 こうして、月日が過ぎてゆく。


そして、ついにその日はやってくる。
卵から小さなタコの赤ちゃんたちが生まれてくるのである。


母ダコは、卵膜にやさしく水を吹きかけて、卵を破って子ども
たちが外に出るのを助けるとも言われている。


卵を守り続けたメスのタコにもう泳ぐ力は残っていない。


足を動かす力さえもうない。子どもたちのふ化を見届けると、
母ダコは安心したように横たわり、力尽きて
死んでゆくのである。


これが、母ダコの最期である。
そしてこれが、母と子の別れの時なのである。 ・・・






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